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PARICARI

瀬奈晃 cure.21679


by paricari

『ちーちゃんはちょっと足りない』

『ちーちゃんはちょっと足りない』


唐突に思いました。

後味の悪い鬱マンガが読みたい!!!!!!!!!!と。

大丈夫です。病んでないです。元気です。
ただ、唐突に読みたくなりますよね、なんていうか不条理なお話。
あ~~~~~~~~~、なんでこうなっちゃうの~~~~~~~~~~みたいな。

で、検索しましたところ、いろんな人が紹介している鬱マンガ、『ちーちゃんはちょっとたりない』。
ぐーぐる先生に聞いても、「ちーちゃんはちょっと足りない 鬱」で出てくるくらい有名な鬱マンガです。
ちなみに、このマンガがすごい!2015 オンナ編第1位 だそうです。

まずは簡易なあらすじ
(瀬奈の見解含むあらすじです。詳しくはいろんなもの見てね)

メインは、元気で天真爛漫、素直で正直、一言で言うとおばかちゃんのちーちゃんと、内気で内向的、立場的にはツッコミ役だがこちらも勉強はできないナツ。
二人の人生には「ちょっと何かが足りない」。
しかし足りないながらも平凡で、どこにでもいる中学生の二人だったのだが、ある日バスケ部顧問の誕生日プレゼントを買うためのお金がなくなる、という事件が発生して。

以下よりネタばれ含む感想




結論から。
ものすごい鬱ってわけではなかった。

うーん、地味にシンプルに、伏線が無言で発生して、無言で終わっている。
サラッと読んでしまえば、本当にそれだけのお話って感じ。
私はサラッと読んでしまった。
ただ、鬱鬱しく残らなかった原因は、この「先のお話」を自分の中で、たぶんこの先ハッピーになれるんじゃないかなぁって思うから。
ハッピーエンド思考です。


表紙と、最初の数話では、ゆるーい日常ギャグって感じ。
よつばと!とか、働かないふたり、みたいな雰囲気。
でも、事件が起きると同時に物語の雰囲気も一変する。

その事件っていうのが、まぁあらすじから想像出来る通り、ちーちゃんが悪意はなく、お金を盗んでしまうってこと。
そしてその盗んだお金を、純粋に好意だけでちーちゃんはナツにあげてしまう。

ちーちゃんは発達障害かなにかかな?
っていうくらい、言葉も未成熟で、もちろん勉強もできない。
中学二年生なのに小学生低学年向けのアニメに夢中。
一般的にオタクと違うところは、純粋な子ども心で子ども向けアニメを楽しんでいるところ。
実年齢は中二だけど、精神年齢は小2くらいなのでは…。

主人公はちーちゃん、のように見せて実はほとんどナツが中心。
ナツは本当に平凡な女の子。
人よりちょっとだけ頭が悪くて(壊滅的な馬鹿ではない)
人よりちょっと家が貧乏で(人並みの生活は送れる)
人よりちょっと内気(いじめられているわけでも、友達がいないわけでもない)
な子。

クラスのカースト上位にはいるような子ではないけど、自殺するような悲惨な状況ではない、と客観的には感じる。
ただ本人はすごく自分が「欠けた存在である」という意識が強い。
これは中学生という、大人というほどいろんな視点や知識から物事を判断できるわけではないけど、何もわからない子どもでもないっていう独特のコンプレックスじゃないかなぁっておもう。

厨2病よろしく、「特別な存在」でありたいけど、実は自分は特別な存在じゃないって気がついちゃう年、的な。
だから、自分がものすごくつまらない存在に思えているだけで、もう少し大人になれば自分がそんなにつまらない存在じゃないって気がつくと思う。
世界からみたらナツはつまらない人間かもしれないけど、何も世界と比べる必要はないんだよ、っていうか…??
あiしiだiまiなはものすごい大金をあの年で稼いでいるけど、だからといって、あiしiだiまiなより稼げていない人間は存在する価値がないわけではない、というか…??
にiしiこiりiけiいにわざわざテニスで勝負をかけに行く必要はなくて、自分のほうが鉛筆回しがうまかったらそれで勝負を挑んだらいいし、自分のほうが歌がうまかったらそれで勝負を挑んだらいいってこと。


ナツは平凡であるけど、その平凡さを改革するような何かを自ら起こそうとは一切しない。

テストの点が悪いからものすごくがんばって勉強するわけではないし、
欲しいものが買ってもらえないという裕福な家庭ではないから自らアルバイトをするわけでもない。

のに、

棚ぼたのように自分のところに転がり込んできた「盗んだお金」には手をつけてしまう。

これはどう弁解することもできないほど悪いことだけど、誰にでも魔がさすっていうことはあると思う。
欲しいものがあって、でもお金が少し足りない。ので、つい盗んでしまう、みたいな。
許されるわけではないにしろ、この気持ちを理解できないわけじゃない。

ナツは盗んだお金でかわいいリボンを買い、それをつけて翌日学校へ行く。
きっとかわいいリボンだからみんなから注目を浴びてしまう。
きっといろんな人に声をかけられてしまう。
きっといろんな人に褒められてしまう。
褒めらすぎて授業が中断してしまうかもしれない、どうしよう。
と、自分に非常に都合のいい想像をしながら教室に入る。が、当然、そんなことおきないんだよね。

たかがリボンひとつつけたところで、人生が劇的に変わるわけではないって話。
そりゃそうだ。

ただ、ナツにとって人生ではじめての(?)平凡ではない自分を打ち破ろうとした瞬間、であったにも関わらず、ポキッと簡単に折られてしまった。
盗んだお金を受け取ってまで買ったリボンだったのに。

この悲惨な絶望感は本当に痛いほどわかる。
自意識過剰に自分のこと恥ずかしい存在だと思い込むけど、周りはそんなに自分のこと気にしてなんていない。
ちょっとおしゃれしようと、そんなわずかな違い、誰も気にしない。

結局、ちーちゃんはバスケ部のお金を盗んだことを(盗む、という自覚はないから、取る、というほうが正しいのかな)あっさり回りにばれてしまい、バスケ部の子に謝罪、のち、和解。
中学二年生で「人のお金を盗んではいけません」がわからなかったけれども、悪いことと理解することができ、結果的に周りとの人間関係の輪を広げることができた。

が、ナツは作中では謝らないし、和解もできない。

ちーちゃん以外の周りの人と溝が生まれ、結果ちーちゃんに依存するようなシーンでお話は終わり。


けれども、あのちーちゃんが、ナツのこともぐいぐい引っ張って輪の中に入れてしまうんじゃないかなぁと。
その中でナツも、謝ったり仲直りできるんじゃないかなぁと、思う。

それとも、作中で僅かながらも成長していくちーちゃんは、これから徐々にナツから離れていくんだよ、っていう布石なのかな。

だとしたら、ナツはひとりぼっちになってしまうね。

by paricari | 2017-04-03 14:00 | 感想